長い日本史の中で、女性だけの問題だと考えられてきた不妊について、男性にも原因があるとわかってきたのはごく最近の話です。昔から「育児は女性の仕事」という風潮があり、その影響で妊娠に関しても女性だけに問題があり、男性にその問題を問うこと自体がタブーとされていたこともあったとか……。
しかし昨今では医療の発達や妊娠・子育てに関する固定観念の見直しが進んでおり、男性でも不妊の原因になりうるということが一般的な常識として浸透し始めています。
WHO(世界保健機関)によると、不妊の原因は女性だけにあるわけではなく、約半数は男性に原因があるとされています。 それでもまだまだ男性の不妊についてよく知らないという方も多いのではないでしょうか?
今回はそんな方のために、男性の不妊の原因や検査方法について詳しく紹介します。
男性不妊の原因って何があるの

不妊症とは「12カ月以上に亘って定期的な避妊法を行わずに性交しても妊娠に至らないと定義される男性または女性の生殖器系の疾患です」とWHOで定められています。
男性の不妊には、性行為時に勃起しない、または射精できないことが原因である場合のほか、以下の示す障害のように射精に至れていても問題を抱えている場合があります。 「性行為時に射精できているから自分には問題がない」とは思わずに、一定期間妊娠に至らない場合は検査に行くことをおすすめします。
造精機能障害
造精機能障害とは、精子が作れない・精子の数が少ないといった精子の有無に関する機能障害、もしくは精子が卵子まで辿り着くことができないといった精子の運動率に関する機能障害を指します。
射精した精液の中に精子が一匹もいない症状のことを無精子症と呼びますが、精液中になくても、まれに精巣や精巣上体に精子がいる場合があります。その場合は顕微授精などで受精させることができる可能性があります。
精液の中に精子は確認できるが、その数が基準値よりも少ない症状のことを乏精子症と呼びます。やや少ない程度であればタイミング法を用いて自然妊娠を狙いますが、明らかに少ない場合であれば体外受精や人工授精なども視野に入ってきます。
精子の数に問題はないが運動率が低く、卵子までたどり着けない症状のことを精子無力症と呼びます。この場合は、自然妊娠を狙うよりも人工授精や顕微授精などで治療を行います。
性機能障害
性機能障害とは、勃起障害(ED)や射精障害などを指します。
性行為中に勃起することが難しく、挿入に至ることができない症状を勃起障害(ED)と呼びます。EDの原因として最も多いのが、ストレスや不安などの精神的なもののようです。妊活中や不妊治療中の性行為自体に対して「うまくできなかったらどうしよう」と不安に感じ、発症してしまうこともあるのだとか。
挿入はできるものの、射精することができない症状を射精障害と呼びます。これには、射精した精液が膀胱内に逆流してしまったり、早漏・遅漏と呼ばれる状態になったりしている場合も含まれます。原因は糖尿病や精神的なもの、服用している薬によるものなど様々です。
その他にも、あまり良くないマスターベーションに慣れてしまい、膣内の刺激だけでは射精に至れなくなっていたり、射精自体に対してストレスを感じていたりすると、膣内射精障害(うまく膣内で射精することができない状態)を引き起こす可能性があります。
精路通過障害
精路通過障害とは、精子自体は作られているものの精子の通り道が詰まっているために、射精した性液の中に精子がいない状態のことです。これを閉塞性無精子症と呼びます。 この場合は、閉塞されている部分に通り道を作る手術を行ったり、精巣から精子を取り出して顕微授精を行ったりして治療を行います。
なかなか妊娠しないなと思ったらお医者さんに相談してみよう

男性の不妊に関する検査は、婦人科・産婦人科で精液検査などを受けるか、泌尿器科でも対応しているところがあります。
不妊治療において、頭を悩ませるのが治療費についてかもしれません。不妊治療はお金がかかると聞くことも多いと思いますが、実は不妊治療費は医療控除が受けられます。また助成金制度もありますので、不妊治療を検討されている方は、お住まいの都道府県のホームページなどから探してみてくださいね!
まとめ
今回は男性の不妊についてのご紹介でしたがいかがでしたでしょうか。 「不妊」と聞くと女性ばかりをイメージされがちですが、実際は男女どちらにも関係しうることがわかっています。
男性の不妊に関しては、無関心であったり他人事として認識してしまっている男性がまだまだ多いのは否めません。ですが、少しずつだとしても男性の不妊に対する認識が広まって、女性が孤独に不妊と戦う状況が解決に向かえば良いなと思います。
この記事は2022年9月時点の情報です。
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